コンピューターリテラシーがまったくない相手に合わせる話
前置き
父親が倒れた。
そのような日がくるとは、想像だにしていなかった。家族の誰もが想像していなかった。
幸い父親の命に別状はなかったが長期の入院を迫られることとなった。
さて、父親は自営業で食料品を販売する店舗を営んでいた。店を畳もうという話も上がっていた。しかし、母親は言った。
「私やってみるわ」と。
確かに、ずっと手伝っていたのでものを作ったり、レジを打ったりは問題ない。しかし、その中でも父親のなかでしかできなかったいろいろな問題の中で一つ問題が生じた。
「パソコンに入っている帳簿を打つのが大変だ」
いまどきの「パソコンが使えない人」とは
母親のコンピューターリテラシーを上げてみる
- iPhoneを所持
- SNSをやっている
- パソコンはほとんど触ったことがない
- 「Excel? どうしていいかわからないんだけど」
さて、困ったことになりました。
「上司のリテラシーが」「部下のリテラシーが」と騒いでいる自分も、さすがにそう片付けられる話ではなかった。
合わせてみたこと
相手のリテラシーに合わせる
「スマホが使える」のだから、スマホで行えるようにすればよい。
きょうび事務仕事は、パソコンよりスマホのほうが優れていると言っても過言ではない。
今まで父親のパソコン上にあった帳簿入力の環境を、スマホ上でもできるように環境を変えることにした。
できないなら代わりにやってあげる
そもそもとして帳簿を打たせるなら、自分が打てば良い。正直店舗も忙しいので、こんなことで母親の睡眠時間が削られては身体に障る。これで母親も倒れられた日には家族としてもうどうしていいかわからない。
オンライン上でするついでに「数字さえわかれば」自分ができるようにした。
オンラインで資料を共有する
ということで、パソコンに入っていた帳簿をGoogle Driveに入れることとした。
幸い、家族全員Googleアカウントは持っていたので、家族で共有できるフォルダーを作成した。
帳簿はExcelで作られていたので、そのまま入れればよい。
ついでに、病院関係の書類もそこに入れるようにした。
GoogleDriveならiPhoneからも見ることができる。iPhoneからの見方を教えたところすぐに理解してくれた。
パソコンからはショートカットを作ることにした。注意するべきは、共有先のリンクは「共有相手に限定」にしておくことだ。「リンクを知っている全員」にすると、リンクさえ知っていればインターネット上の誰でも見られるようになるので、セキュリティ上問題がある。
LINEを使う
LINEは連絡手段としてはずっと使っているので、なじみがある。
最初、母親に帳簿の元ネタになる帳面などをGoogle Drive上にアップロードしてもらうように考えた。
しかし、初日にLINEで来た連絡
アップロードの仕方も教えたのだが難しかったようだ。
そもそもLINEでなら写真のアップロードの仕方は分かっているので、LINEで写真を撮ってもらいそのまま自分との個人ルームにアップロードしてもらうことにした。それを画像としてGoogle Drive上で保存するのは自分がすることにした。
もちろん、諸々の連絡もLINEで行っているので、コミュニケーションのベースはLINE上とすることに方針を変えた。
どうしてもパソコンでする作業をサポートするために
印刷やインターネットバンキングからの振込などなどどうしてもパソコンから行う必要な作業があったりする。
もちろんこれらもスマホ上からできることはできるが、設定がややこしいのとスマホのほうが難しい類の作業である。
マニュアルを作る
基本中の基本である。口頭で教えると同時にマニュアルを作ってあげた。これでだいたいのことが理解してもらえた。
動画に残す
パソコン上の作業を口頭で説明しても、メモをしても細かいところが漏れてしまうことはよくある。
なら、最初から動画に残せばいいじゃないか?
Windows10ではWindows+Gキーで「XBOX Game Bar」というゲーム配信用のソフトが有る。
だが、ゲーム配信にも使えるだけでブラウザーの画面も取り込むことはできる。
インターネットバンキングからの振込の仕方なども動画に撮って残しておくことにした。わからなくてもこれを見れば良いという状況にすればいささか安心である。
クイックアシストを使う
Windows10には「クイックアシスト」というアプリがある。端的に言うと、Windows標準の画面共有ソフトだ。
ちまたにあるものではTeamViewerやMicrosoftTeamsなんかもそうだろう。だが導入は必ずしも簡単ではないし、アカウントも新たに作らなければならない。面倒だ。
Windows10のクイックアシストであれば、簡単に画面共有を行うことができる。これでLINEで会話をしながら、Windowsの画面を共有するという方法を使えるようになった。
これは過去のブログに書いたので参照いただきたい。
感想
パソコンって事務に必要ないと確信した
スマホは使えるけれど、パソコンは使えない。
そのような人は老若男女問わず広くいる。むしろ、20代後半から40代前半が特異点で、コンピューターに慣れ親しみすぎていたのだ。
社会では、パソコン技能は「必須技能」として扱われている。が、正直に言って、新人である程度使える人間は3割程度。満足に使えるのは1割いれば良いほうだ。
なお、40代以上のほうは使える人は1割いればいいほうだ。
今回の経験を通じて、いっそパソコンでの事務仕事は止めたほうがいいと、強く思うようになった。なぜなら、スマホ上で事務仕事がある程度できてしまうからだ。
とはいえスマホで向かない作業も分かった
もちろん、一部で向かない作業がある。例えばその一つは「印刷」である。
「ペーパーレスでもいいじゃない?」
という考え方もあるかもしれないが、店舗運営上印刷する必要のあるものはそれなりにある。
スマホでの印刷、というか、スマホアプリでの印刷設定は極めてやりづらい。まだまだこの点はスマホ上では課題だろう。
もっとも、そういったものは今後「ないもの」とされるだろうが。
お金類の扱いには本当に困った
父親名義の口座になっているので、本来家族といえど他人がアクセスするのは問題がある。
実際、銀行ATMを使うなら実運用上「通帳」と「カード」を共有することで事足りるし、黙認されている。
だが、インターネットバンキングはどうだろう?
厳密にいえば、パスワードを共有することは、違法とされても仕方ない。ただ、家族であればある程度共有できないと困ることもいくらかある。これは銀行側のシステム的な課題だろう。
ちなみに大きな声で言えないが、とある銀行のパスワードの再発行を行った(父親も忘れていたので、同意は取って行った)。
してみたところ…ため息を付いた
「こりゃソーシャルハッキングやりたい放題だわ」
いろいろ「銀行員はパスワードを聞きません」などあるが、これはある程度情報を仕入れることができれば本人の知らぬところでごまかす方法はいくらでも思いついた。
正直、銀行のセキュリティの問題は銀行にある、と改めて思った。
まとめ:コミュニケーションにテクノロジーは必要だ
最後に、今回一番助かったのは「テレビ通話」だ。
ご存じのとおり、昨今の感染症情勢から病院も面会者を制限するという対処を取っている。
そのような中で、父親との面会をLINEのテレビ通話でできたのは本当に救いだった。
ただ、顔を見て話をする、というそれだけだ。 だが、家族が病床にいるなかで、本人にとってもとても良いことだった。
リテラシーだリテラシーだ、とほざいても結局使う側に合わせなければならない。
そのためにリテラシーがあると自信あるという人ならば、相手側に技術力の向上を求めるだけの方法ではない。
「適切な方法は何なのか?」を考えて使うのがテクノロジーというものという経験になった。
蛇足
もっとも、このような話を許しているのは母親だからだ。
それで金もらってる人間は、パソコンのセットアップくらい自分でやれ、と思う次第である。できる人が1割もいない職場はつらい。
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